とびら
人間理解
松本 妙子
1
1高知清生園
pp.5-6
発行日 1974年1月15日
Published Date 1974/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100754
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人間だれしも家庭,職場,社会,どこに生活しても他者との拘りをもって生きている.この拘りあいの中にこそ悲喜こもごもの人生模様がある.ときには一人になって人間関係の煩わしさから離れてみたいと,野に山に海にと自然を求めて,でかけることもある.又煩わしい相手とは言葉を交さなくても良い方法を考えることもできる.しかし,この世に在るかぎり人間関係から逃がれることはできないであろう.
人間相手のサービスを中心とする職業は,職場やその他の一般的な人間関係の他にプロとしての人間関係が生じる.我々セラピストも人間との拘りあいの上にたつ職業である.その相手は身体的にも,精神的にも疾病や障害というハンディキャップをもった人間であり,且つ援助を求めている人間である.我々は,この相手から逃がれることはできない.逃がれられない人間関係なら,そして援助しなければならない立場なら,相手の患者を,より深く理解し,その患者のその状況に,よりよく適応した援助ができるように努めなければならない.このような人間関係即ち治療的人間関係とは,あくまでも主体は患者にあり,患者の欲求充足や必要性のためにあるのであって治療者のためにある人間関係ではない.この点をセラピストはよく認識し,患者と接しなければならないと思う.それがプロのもつ厳しさというものであろう.
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