今月の主題 補完・代替医療
話題
芸術療法―絵画療法を中心に
高江洲 義英
1
Yoshihide TAKAESU
1
1医療法人和泉会いずみ病院
キーワード:
芸術療法
,
絵画療法
,
エコロジカル・アプローチ
,
制度論的精神療法
Keyword:
芸術療法
,
絵画療法
,
エコロジカル・アプローチ
,
制度論的精神療法
pp.769-772
発行日 2003年7月15日
Published Date 2003/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101088
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1.芸術療法の広がり
絵画療法をはじめとして,芸術療法の今日の広がりは表現をめぐる諸領域に及んでいる.絵画のほかにも,音楽,文芸,陶芸,心理劇,箱庭,東洋芸道などの各技法がそれぞれの施設で工夫され,実践されている.これら各種の表現技法は,わが国の精神医療のなかで,かなり以前から,現場における工夫として熱心な臨床家によって試行されていた.絵画や音楽から,園芸にまで及ぶ広範な技法および作業活動の領域が精神科臨床の場に導入され,時に生活療法と呼ばれたりした.その後,この領域は作業療法(入院)やデイケア(外来)の主要活動種目として展開されて,今日の隆盛をみるようになった.
フロイトSに始まる精神分析,精神療法の流れは,個人の内部に潜む精神力動を解明し,人間のもつ癒しの構造を明るみに導き出してきたが,無意識の発見に伴う自我の構造への考察は,自由連想法や夢分析などの技法を開示していった.さらに,ユング CGの分析心理学は,集合的無意識,象徴,太母,マンダラなどの心的コンプレックスを概念として提示し,魂への理解を深めて表現技法への理論的基盤を築いた.他方で,アリエッティ Sは大著「創造力」を著して,創造のもつ癒しの力を解明し,三次過程としての創造過程の意義を重視し,力動的精神医学の見地から芸術療法のもつ治療的意義を深めていった.
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