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はじめに
身体障害者には不適応な態度行動をあらわす者が多いといわれる。R.G. バーカーの所論を解釈すれば,身体障害者の55%から65%はなんらかの不適応を示すということになる。整肢療護園で行なった精神健康度診断検査でも,TBやその他の障害では総平均値はほぼ正常であるが,ポリオ(36.5パーセンタイル),脳性麻痺(26.0)と精神的に不健康なことを示し,ことに,不適応感,情緒不安定,器管劣等感,集団への参加などに低い平均値を示している。
またS.J. グリックの脳性麻痺者の研究でも,全体の75%に情緒的不適応が認められ,障害の軽い者にむしろ多かった(83%)とし,その原因が両親の不適切な態度と認められるものが81%もあったといっている。
筆者は最近,整肢療護園の母子入園2回以上の68例について情緒的安定度の観察記録を調べたところ,情緒的に安定していると認められたもの15例(23%),問題ないと思われるもの25例(37%),不安定で問題ありと思われるもの21例(30%),注意を要する問題児と思われるもの7例(10%)であって,問題のある40%の母親にも問題のある者が多いと認められた。
これらの対象児は満3歳から6歳前後の幼児であるから,すでに情緒的問題の現われた子どもはまだ比較的少ないけれども,両親の今後の肢体不自由児に対する態度が,グリックが示すように多くの不適応を起こす原因となるおそれが多分に予想される。
訓練のために肢体不自由児たちに接触することの多いPT・OTの専門家たちは,子どもの体の機能だけでなく,心の発育状況を客観的に観察する立場におかれている。心の正常な発育は体の機能の発達にも好影響を与えるものであるから,心の育成に最も大きな影響を与える親たちに,PT・OTの人たちみずからの客観的観察や,医師・心理専門家たちの意見に基づいた適切な助言を与えるよう努めなければならない。
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