特集 必修.周産期の心のケア
障害をもつ子の親からのメッセージ
野辺 明子
1
1先天性四肢障害児父母の会
pp.1054-1059
発行日 1998年12月25日
Published Date 1998/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903476
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身構えていた私──娘の障害を隠した1年
私自身が娘を出産したのは,すでに26年も前になる。その当時と医療事情も違うだろうし,私の経験が果たして参考になるかどうか気になるが,重い病気や障害をもって生まれてきた子どもの親の気持ちは今もそう変わらないと思われるので,微妙に揺れ動く母親の気持ちを中心に述べてみたい。
1972年生まれの娘は右手の指が親指以外はほとんどなく,ただそれらしき指の痕跡がつぶつぶとかたまってついていただけだった。出産した産院でも初めてのケースだったらしく,東京の大きな病院の形成外科を紹介されたが,そこでも「右手指奇形—「第2〜5指欠損」とだけ聞かされて,原因,その他の詳しい説明はなかった。ちょうどサリドマイド剤による四肢障害の子どもたちの問題が薬害事件として大きく報道されていた頃だったが,娘はサリドマイド剤とも無関係であったから,なぜこのような指のない子どもが生まれるのか,私たち夫婦にとっては大きな問題であった。結局今でも先天性四肢障害の原因の多くは不明のままだ。
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