目でみる耳鼻咽喉科
鼻腔後部の出血(とくにWoodruffのnaso-nasopharyngeal plexusについて)
野々村 直文
1
,
川名 正博
1
,
佐藤 充
1
,
今井 昭雄
1
,
中野 雄一
1
1新潟大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.346-347
発行日 1987年5月20日
Published Date 1987/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210302
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鼻出血の大部分は鼻中隔前端部のいわゆるKiesselbach部位からのものであり比較的容易に止血できる。しかしながら時に鼻腔後部よりの大量出血に遭遇し止血に難渋することがある。鼻腔後部よりの出血は中高年齢層に多くみられ,高血圧症,動脈硬化症などの循環器疾患や血液疾患,肝疾患などの全身疾患を伴っていることが多い。Woodruffは上咽頭側壁から下鼻道側壁にかけて太い血管が存在し静脈叢を形成していると述べ,ここをnaso-nasopharyngeal plexusと称した。中高年者ではこの部位の粘膜直下にしばしば怒張した太い静脈がみられ,その深部に顎動脈より分岐した蝶口蓋動脈の外側後鼻枝,大口蓋動脈の下後鼻枝,時に咽頭動脈の枝が流入している。
この部位の出血に対してはまず前鼻鏡下でタンポンを挿入する。タンポンは鼻腔後部において総鼻道から下鼻道側壁にかけてきちっと挿入する必要がある。前鼻孔よりのタンポンで止血しない場合にはBellocqタンポン,顎動脈結紮術,外頸動脈結紮術が行われる。最近われわれはこの部位の出血に対してフィブリン糊で鼻腔をパックする方法を用いており良好な結果を得ている。Foleyカテーテルを前鼻孔より挿入し,上咽頭でバルーンをふくらませ,鼻腔後部を閉塞後鼻腔の奥の方よりフィブリン糊で充填し,糊が固まったころカテーテルを抜去する方法である。この方法はタンポンを挿入する方法と比べ,鼻腔の複雑な形に適合し粘膜障害が少なく有用である。
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