第2期咽頭梅毒の1例—多様化する性風俗との関連

Secondary Syphilis of the Pharynx

I．はじめに

　本邦における梅毒の動向を厚生省に届け出された統計より判断すると，第2次世界大戦後より減少の一途をたどっているようにみえる^1）。しかしながら他方では実際に届け出される何倍もの患者が潜在しているともいわれその実体の把握は困難である。とくに昭和55年以後に顕症梅毒の増加があることは注目に値すると思われる^2）。

　咽頭梅毒はどの成書にも記載されるほどによく知られた疾患であるが，耳鼻咽喉科医として実際にそのような患者に遭遇することは梅毒患者の少なくなった今日では珍しいと考えられる。昭和59年に安部ら^3）は梅毒性扁桃炎の1症例を報告したが，これが最近の本邦における咽頭梅毒の耳鼻咽喉科医による唯一の報告例である。

　A case of secondary syphilis of the pharynx in a51-year-old male is presented. The mucous membrane lesion was unique. showing erosive areas with whitish coating in both sides of the pharynx over tonsils and soft palate. Association of syphilitic laryngitis was suspected. History disclosed that the patient had sexual contacts orally with male homosexuals. The case is discussed in relation to probable increase of syphilis and liberalization and diversification of sexual activities in recent years.