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I.緒言
ある時突然に発症する突発性難聴は,発症に気づいた時点で,その障害の程度は最高に達していると考えられており,またその予後は,発症より治療開始までの期間が短いものほど治療に反応し改善しやすい傾向がみられるとされている。治療後の予後は,治療によく反応するものと,治療に反応せずに不変のまま経過するものとに大きく分けられるが,治療開始後にさらに聴力が悪化することは稀なものである。
1976年寺山ら1)は,ステロイドを使用したところ,初診時よりさらに聴力が悪化した突発性難聴症例3例を報告した。その悪化はステロイドによるものであるとしてステロイド使用の注意を喚起した。その後,柳田ら2),神崎ら3),大橋ら4)も同様の症例を報告しているが,筆者も,昭和54年6月より56年5月までの間に同様な4症例を経験した。すなわち,初診後直ちにステロイドを中心とする治療を開始したところ,治療開始後,聴力は悪化し,高度難聴に陥った症例である。しかしこの症例では,その後も継続的にステロイドを使用し,全症例とも著明な改善を示したので,その純音聴力検査結果より聴力の経過を検討し,文献的考察を行い報告する。
Four patients with sudden deafness were treated with steroids immediately after the initial symptoms of sudden deafness. Hearing loss of all cases became worse in a period of 2 or 3 days after the steroid administration. Their hearing acuity was markedly impaired. However, the steroid therapy was continued and the hearing loss showed the remarkable improvement after 7 to 20 days of treatment. The author discussed on the steroid therapy for sudden deafness, and concluded that if the patient have no major side effects there is no necessity of cessation of steroid administration even when the hearing loss was progressive after the steroid therapy was started.
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