特集 今日の耳鼻咽喉科
日常診療に必要な知識
ショック
ショックとは
玉熊 正悦
1
,
望月 英隆
1
1東京大学医学部第一外科学教室
pp.745-753
発行日 1979年10月20日
Published Date 1979/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208962
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I.はじめに
ショックとは,侵襲に伴つて発生する生体機能の広汎な乱れを漠然と総称する症候群で,医学の領域のみでなく,一般社会でも日常茶飯に使用される名称である。1743年Henri Francois LeDranが砲弾で撃たれた創傷の描写の中で,外傷後の進行性の悪化の表現に始めて使用したと言われる1)。その後200年以上にわたる研究の歴史を顧みても,病態,治療法いずれもやはり戦争の都度飛躍的に進歩して今日に到つたという皮肉な足跡は否定し難い。当初は血管運動神経中枢の麻痺と虚脱説が病因の中心であつたが,第二次大戦前後から循環血液量,静脈還流量,心拍出量の減少が注目されるようになつて近年の本格的なショック研究が活発になり,やがて今日のように微小循環系,代謝の変化,ショックのいわゆる悪循環を左右する多数の体液性因子の解析へと進んでいつた。医学全般の進歩,救急医療体系の整備されつつある今日の社会でも,手術や交通外傷,工場災害などを機に重篤なショックに陥り治療に反応せず鬼籍に入る患者の絶えない事実を念頭に,与えられた課題を分担するが,日常の診療にもつとも大切な治療面はこの特集の中で他にいろいろとりあげられているので本項では主に定義,分類,一般的な病態について解説したいと思う。
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