カラーグラフ 目でみる耳鼻咽喉科
コレステロール中耳炎—コ結晶と異物反応の形態
仁保 正和
1
1仁保医院
pp.486-487
発行日 1979年7月20日
Published Date 1979/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208920
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コレステロール中耳炎(以下コ中耳炎と略)は,慢性中耳炎の経過中にコ析出が起こつたために,コ結晶に対する異物反応とそれに伴う特異な現象を生じたものである。コ析出は軟部組織の脂肪化によると老えられ,それは粘膜上皮にもつとも多く観察される(第1図)。貯溜液中のコ結晶は粘膜上皮から移行したものである(第2図)。第3図の大小種々のコ結晶は,コ析出量の増加に伴う結晶増大の過程を現わしているものであろう。さらにコ結晶は,層状結晶を単位として融合を重ね,増大していくと推測される(第7図b)。これらの結晶の断面はいわゆるコ裂隙を現わす。組織および貯溜液内で平行して走るコ裂隙は層状結品の断面として,一見複雑に見えるコ肉芽腫内の多数のコ裂隙も融合結晶の断面として見ると理解できる。
もつとも初期の異物反応は泡沫細胞として認められる(第4図)が,これは組織球が初期微細結晶を摂つたものであろう。結晶の増大に伴い異物巨細胞が出現し,さらにその周囲に血管結合織が増殖する(第5,6図)。しかし異物処理できないためこれらの細胞は消退し,かわつて膠原線維が増殖し(第7図a),コ肉芽腫は瘢痕化し(第7図b),異物反応は終る。これらの反応は軟部組織に認められたが,この理由は,異物反応が,異物が生体に慢性刺激を与える時それを除くために起こる反応であるからである。また異物反応が質的,量的,経時的変化を示した理由は,異物となるコレステロールが不けん化脂質に属するため,性質が非常に安定している上に,結晶が増大を続けるからである。
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