創刊50周年記念特集 今日の耳鼻咽喉科/治療のコツと全身管理
鼻—症候と疾患
くしゃみ
小川 浩司
1
1都立大久保病院耳鼻咽喉科
pp.771
発行日 1978年10月20日
Published Date 1978/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208732
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くしゃみの発症機作はきわめて複雑で,しかも未だ不明な点が多い。しかしくしゃみ発症の神経生理学的経路は,刺激受容器としての鼻粘膜と中枢を結ぶのが三叉神経であり,中枢と効果器としての鼻粘膜を結ぶのが副交感神経である点だけは明確であるといえよう。自律神経系は光刺激,寒冷などの種々の身体的影響および視床下部を介して精神的要因をも反映される。鼻粘膜に分布する副交感神経は全身の自律神経系を構成する一部であるから,当然のことながら,種々の身体的,精神的要因の影響を受ける。この事実はくしゃみの臨床をより興味あるものとし,同時に治療にあたつては十分留意すべき点であると考える。
Strombergはくしゃみの発症機作から分類し,allergic or irritative,autonomic,paroxysmal orpsychological,CNA seizureの4つに分けているが,筆者はこれに代謝性(低血糖,甲状腺機能低下など)を加えたい。果たしてこれら単独でくしゃみを起こすかどうか疑わしいが,ときにはくしゃみなど,鼻アレルギー類似の症状がある症例に遭遇するからであり,全身管理上念頭におく必要性を感ずるからである。重要なことは,中枢神経系障害を除けば,これらの要因は複雑に絡みあつていて,多かれ少なかれどの症例にも存在することが予想されることである。
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