特集 外傷
食道損傷
井上 鉄三
1
1国立病院医療センター耳鼻咽喉科
pp.857-863
発行日 1976年10月20日
Published Date 1976/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208420
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.食道外傷
1.頸部食道損傷
1)頸部食道損傷とは
この部分の食道損傷は,主として自殺の目的で傷害されるものによる。カミソリの刃,ナイフ,棒ぎれ,時には傘などの先端鋭利のものすべてが用いられている。そして,多くの場合創傷は水平であることが多く,上頸部である。舌骨と甲状軟骨の問,顎骨と舌骨の間などが多く,甲状軟骨より下の部分は少ない。用いられた用具が,長くて鋭利であると,気管を損傷し,さらに食道に達する深い創傷となる。しかし,粘膜まで完全に切断することは稀であり,多くの場合,それより浅い部分で創傷は終つている。右手効きの場合が多いので,創傷は正中より左側に偏している場合が多い。食道が損傷されている場合は,その周囲の組織器官も多大の損傷をうけている。
弾丸のような噴射物による食道外傷は,また,大変特異的である。直接食道穿孔を来たす場合もあれば,付近の組織を大量にえぐり取る場合もある。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.