特集 小児耳鼻咽喉科疾患
小児の唾液腺疾患
北山 徹
1
1関東逓信病院小児科
pp.817-823
発行日 1972年10月20日
Published Date 1972/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207844
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Ⅰ.まえがき
新生児期の唾液腺は小さく血管に富むが,腺胞はまだ未発達で粘液細胞の数も少ない。しかしその後発育にともなつて次第に増大し,3カ月で約2倍,6カ月で3倍,2歳で5倍となる。さらに延髄にある唾液分泌中枢は4カ月頃から発達してくるので,唾液分泌量も次第に増し,とくに6カ月頃からは著明に増加し,唾液分泌量は生後1年位で1日50〜150ml,学童期に500ml,成人では1〜1.5lとなる。唾液のpHは乳児期には酸性であるが,学童期にはほぼ6.5〜7.0と中性になる。唾液の主要な生物学的意義は澱粉を麦芽糖に分解する消化作用と,抗菌作用に求められるが,年齢とともにその活性も増してくる。たとえば唾液中の消化酵素であるptyalinは,新生児期には成人の1/5しかその活性をもたない。さらに特に耳下腺からは軟骨,骨,歯芽などの発育に必要なホルモンparotinが分泌されるが,胎児性軟骨異栄養症では胎生期から耳下腺の形成不全がみられるといわれる。このように発育途上にある小児の唾液腺疾患は全身的にもいろいろ重大な影響を与えるものである。
唾液腺疾患としては第1表に示すように多種類のものがあるが,日常小児にもつとも多く遭遇する疾患はムンプスと反覆性耳下腺腫脹症であろう。また唾液分泌異常も多くの全身性疾患の一分症として認められ,それぞれの疾患の重要な指標となり得るので注意が必要である。本文では小児に特徴的な唾液腺疾患に主体をおいて記述しておきたい。
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