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I.はじめに
われわれは以前から慢性喉頭炎の原因を追求し,また報告してきた。成書にもあるごとく,甲状腺機能低下症においては嗄声はかなりの頻度に現われるものである。一方,群馬大学第一内科では本症の研究が盛んに行なわれているため症例が多く,われわれは幸いにしてその喉頭を多数見る機会を得た。また本疾患は後述する如く近年その数を増しつつあるといわれている。そこでわれわれは嗄声を主訴として来院し,慢性喉頭炎として治療しているが容易に治らない症例のなかに本症がふくまれているのではないかと考え,まず内科より本症と診断されて送られてくる喉頭をできるだけ多数しかも詳細に観察し,できれば写真に記録しておいた。そしてその知識をもとにして慢性嗄声を訴える患者の原因として,本疾患を見つけることができれば,嗄声の原因的治療が行なわれ得るはずである。もちろんこの際喉頭のみならず,甲状腺の状態や全身症状を参考にするが,症状が定型的に揃わなくてもある程度の疑いをもつて内科に検査を依頼して確認されたり,治療により症状の改善された例は最近その数をましてきた。したがつて喉頭を治療するものにとつて本疾患に関する知識は必要であり,従来単なる慢性喉頭炎として治療されているものの中に本症に原因するものがないか考えなおしてみる必要がある。
Twenty six cases of patients complaining of laryngeal troubles due to hypothyroidism are studied. Twenty three of these were women. Nineteen cases complained of hoarseness of the voice and other that of deafness, sore throat and lowering of the voice.
Examination showed that there was edema of the true vocal cords in 16 cases where thicking and swelling with their surfaces uneven. Five cases showed a marked dilatation of the capillaries of the vocal cord. Nine cases presented incomplete closure of the glottis which is considered as the important cause of the hoarseness. The edema of the arytenoids was quite remarkable in 5 cases, which may have caused the lump sensation of the throat.
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