臨床病理医はこう読む ホルモン異常・1
甲状腺機能低下症
屋形 稔
1
1新潟大中央検査部
pp.1418-1419
発行日 1976年10月10日
Published Date 1976/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206792
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T3テストについて
この症例は各種甲状腺機能検査から,明らかな甲状腺機能低下症と考えられる.注意しなければならないのは,T3テストをTBC index法のごとく,レジンストリップをレジンスポンジの代わりに用いると,両法は機能亢進または低下で数値の多少が表現としては全く逆になることである.
T3テストはレジンスポンジを用いるトリオソルブテストが10年前に紹介されてからPBIに代わって普及してきた.実地医家も自ら行わなくとも,病院検査室や検査センターに血清を送って報告を得,時にこれのみで診断に供しているが,キット毎に方法も表示値も異なるから,値の読みに心しないと混同するおそれがある.T3テストの原理は,表1のごとく,甲状腺機能低下症では内因性ホルモン分泌が少ないため,甲状腺ホルモン結合蛋白(TBP)飽和度が低く,血清への摂取率が高いことを利用している.甲状腺機能亢進症では逆の関係になる.吸着物質または血清の131I-T3摂取率を測定すれば,甲状腺機能状態を知ることができるが,測定されるものが血清であるか,吸着物質であるかにより,甲状腺機能状態と数値が逆になる.
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