鏡下耳語
耳鼻咽喉領域診療の現状にいつて
後藤 修二
1
1国立聴力言語障害センター
pp.132-133
発行日 1970年2月20日
Published Date 1970/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207422
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耳鼻咽喉科およびその関連領域,あるいは境界領域の疾患についての診断,治療の現状に関して,私なりに理解しているところを記して将来への展望にしたいと考えて筆をとつた。ところがこのためには医療行為そのものについてばかりでなく,これに大きな関連のある医療制度のあり方にも触れなければならない。また医学教育における耳鼻咽喉領域の取り扱い方,およびこの方面の研究がどうあるかも無関係ではない。そこでこうしたいろいろの重大問題と関連づけて耳鼻咽喉科診療の現状をみることが必要である。そうした見方をすることによつて浮き彫りにされてくるのは,上述のいろいろの分野に伏在する問題点であろう。ところがこれらの分野はまつたく無関係にあるというものではなく,それぞれが複雑に関連し合つている。であるから耳鼻咽喉領域診療の現状を分析して存在する問題点をこれらの分野において明らかにしただけでは,将来の展望はどうにもならない。そこでこれらの点についても私見を述べたいと思う。
耳鼻咽喉領域の診療における特徴は何といつても狭い視野の中で深い部位に対して診療を行なうということである。また耳鼻咽喉のほとんどの部位が脳神経支配の頭頸部にあつて,頭蓋内と密接しているということも解剖的に特異的である。こうした特異な状態にあるために,耳鼻咽喉領域の診療における教育,修練,研究の場において,特に意を用いなければならないことが多い。そうしたことからして耳鼻咽喉の診療は若い人々にとつて取つ付き難いといわれるのであろう。
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