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I.はじめに
発作的にくしゃみ,水様鼻汁,鼻閉を繰り返すいわゆる鼻アレルギー様症状をもつ疾患は,臨床的にアレルギー性鼻炎または血管運動性鼻炎,鼻アレルギーなどと診断されている。これら疾患について,病因としてアレルギー反応の結果発症するとする立場と,自律神経異常,内分泌異常などを重視し,これらの機能失調により発症するとする二つの立場が従来よりあり,その治療面にもこの立場が反映されてきた1)2)。しかし最近におけるアレルギーについての多くの研究より,アレルギー症状自身抗原による抗原抗体反応という特異的因子によつてのみ発症するのではなく,これら抗原抗体反応を基盤として自律神経異常などの非特異的因子によつても,同様なアレルギー症状が発症すると考えられるに至つた3)。鼻アレルギー様症状をもつ疾患についても同様なことが考えられるのは当然であり,抗原たとえば花粉の暴露によつてのみ発症するのではなく,多くの非特異的因子によつても誘発されるものと考えられるようになつた4)5)。日常外来における鼻アレルギーの治療には抗アレルギー剤,副腎皮質ホルモンの局所・全身投与,また原因療法ともいうべき減感作療法などがあるが,これらについては種々の問題があり,その治療成績も必ずしも満足すべきものとはいえない現状である6)7)8)9)。
一方,手術療法を行なつて軽快させようと多くの手術が行なわれてきたが,多くは再発し手術効果は不確実であるとされている1)10)。しかし鼻アレルギー患者の鼻中隔彎曲,下甲介肥厚について電気焼灼・下甲介切除などの手術療法を行ない,一時的にも好結果が得られることも報告・経験から知られているところである11)12)13)。直接アレルギー反応に関与しない手術操作により症状が軽快することは,鼻アレルギーの反応がおこる鼻腔内に何か発症の非特異的因子が存在しているのではないかと推測される。
私達は多数の本症患者の鼻内所見の観察から,鼻腔内の非特異的因子ともいうべきものの一つとして,鼻中隔棘・櫛や下甲介・中甲介それぞれの接触・圧迫像がそうではないかと考えた。そして疾患の根本にある抗原抗体反応を手術療法で抑制・阻止することはもちろんできないが,鼻内局所因子ともいえる鼻腔病態を正常化することによつて,アレルギー反応を誘発する多くの非特異的因子の相互作用を抑制し,鼻アレルギー症状を全体として発症閾値下におさえることができるかも知れないと推定した。この考え方のもとに,アレルギー性鼻炎または血管運動性鼻炎症1列26例52側について手術を行ない,一応の結果をえたので報告し,ご教示を仰ぐ次第である。
The authors report the result of 26 cases of allergic and vasomotor rhinitis of which they treated by operative means. Examination of these cases revealed hypertrophic inferior turbinate, either alone or, in combination with highly deviated nasal septum with the nasal structures pressing against each other or against the peripheral tissues of the nasal cavity. In order to render the nasal cavity to its normal state provided with ample breathing space, operations were performed following Takahashi's technic of intranasal plastic operation.
Plastic resection of the inferior turbinate was performed on all 26 cases and septal resection on 19 cases. The postoperative results in all case appeared to be satisfacory.
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