鏡下耳語
耳鼻科に大切な視力と記憶力
山川 強四郎
1
1大阪大学
pp.472-473
発行日 1968年6月20日
Published Date 1968/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203966
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局所が明瞭に見えなかつたら耳鼻科の診察も手術もうまくゆかない。明瞭に見うるには局所が明るく,大きく周囲が十分にくらく,また術者の視力がよくなければならない。こんなことは,耳鼻科検査法の最初の講義にあることであるが,案外無関心の人が多い。光源電燈を患者の頭から遠く離していたり,上や,うしろや前に偏したり,手術野に光が当つていないで,先輩から「リヒト」「リヒト」今の言葉でいえば「ライト」「ライト」と注意を受けたり,気管や食道の検査の場合,なかなか十分の光が入らなかつたり,もつとも光を入れることに熟練を要しないよう管の入口に光源を取りつけたブリューニングスや管の先端に燈をおくジャクソンの管もある。明るい場所で物をみるのと,うす暗い場所で物をみるのとでどちらがはつきりわかるか論ずるまでもあるまい。無意識に,いつでもみる部位が明るく,照らされているようになるには入局後数カ月を要する。これでよく見えたらあとは外科と大差はない。
検者の眼は光源と局所を結ぶ線を底辺とする二等辺三角形の頂点にあり,底辺はなるべく短く,光源は局所より少し高く(光が手で遮ぎられぬため),両辺は明視の距離であり,反射鏡の焦点距離の倍位がよい。反射鏡は眼にもつとも近くおけば視野が広くて,術者が動いても広く見ることができる。
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