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I.はじめに
近代社会生活の高度発展,複雑化はわれわれの周囲に種々のstressorを生み,間接あるいは直接に作用を及ぼし,このためその精神的,肉体的負担は漸次増加の傾向にある。耳鼻咽喉科領域でもこれらstressorに起因するいわゆる近代病に属する精神身体症ならびに自律神経失調症を基盤とした疾患,症候群は最近決して少なくなく日常しばしば遭遇するものである。近時,ますます増加の傾向にある咽喉頭,食道入口部に異常感覚を訴えて来院する症例も,まだその発症機序は明瞭には解析されていないが,その一つと考えられ,今後この方面に対する研究は当然より重要視されて行くべき問題と考える。しかしひとくちに咽,喉頭,食道異常感といつてもその訴える部位ならびに内容は症例により異なり,そのうえきわめて微妙かつ複雑で完全な把握は容易でない。したがつて「咽喉頭部異常感症」という呼称もこのような複雑な症候群に対する漠然とした症候名で,その成因の充分解明されていない今日では明瞭な定義すら下されておらず,この名称,概念に対する解釈の仕方ならびに範囲も各人様々で必ずしも見解の一致を見ていない。従来,その成因に関しては器質的あるいは機能的因子,局所的あるいは全身的因子など種々の面より検討がすすめられてきたが,個々の因子を追究し過ぎて,系統的な病態の考察が不充分である。したがつて,その治療法も想定される原因により精神療法,薬物療法,手術療法,物理療法など治療医の主観に左右されて症例毎に異なり,常に著明な効果の期待し得る一定の方法が決定せられないのが現状である。私は鼻,咽喉頭鏡検査で局所に異常所見を認めたものは,まずこの治療を第一として,次に全身的見地から必要なものには薬物療法を行ない,これに心理療法と併せて,直接に異常感の発症に関与する咽喉頭部の知覚神経のうちとくに上頸神経節のブロックを行ない,きわめて優れた治療効果をあげているのでここに報告し諸賢の参考に供するしだいである。
It is believed that the cause of abnormal sensation of the throat is not a simple affection but a gradual onset of the combined affect that originate from various sourses local, general and psychological. However, the actual sensation is felt in the throat and in which the sensory nerves of this region along with the sympathetic nerves which they connect appear to play the major role. On this assumption the author treated these cases by nerve-block procedure using injection of 1% novocain solution into the superior cervical ganglion. Seventy four percent of patients were relieved from their troubles.
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