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Ⅰ.緒言
黒毛舌症は,舌における糸状乳頭の伸長ならびに異常着色を起こす特種な疾患として古くより報告されている。しかしながら,未だその原因について定説となるべきものは存せず,種々なる原因があげられている。すなわち,文献的にもつとも古いHeidingsfeld1)の報告では胎生異常,梅毒として記載され,Laskaris2)は感染による局所刺激およびタバコ,LayneとWatson3)はニコチン酸欠乏,さらには,Lineback4)は抗生物質使用による口腔内細菌叢の変化による糸状菌感染によるものと報告している。わが国においても多くの報告がみられるが,抗生物質使用時または使用後の菌交代現象の部分現象として報告されているものが多い。一般に抗生物質使用に伴う黒舌症は,単に舌の異常着色がみられるのみで,舌毛は必ずしも長くなく,抗生物質投与中止後は,比較的早期に舌の着色も消失するもののごとくである。しかしながら,舌に非常に長い黒褐色の舌毛を有する,いわゆる黒毛舌症は,抗生物質の発達した今日においても臨床上必ずしも多くはなく,また治療に抗するものが多い。
最近私は,長い黒色の舌毛を有するいわゆる黒毛舌症の患者5例に遭遇した。これら患者の治療に先だち,患者の舌毛部より塗沫標本を作製し,細菌検査を施行したところ,いずれの症例よりもグラム陽性,芽胞形成性長桿菌および糸状菌を検出した。したがつて,かかる菌が該黒毛舌症に関係を有するや否やにつき追求すると共に,さらに本症発生の原因,ならびにその治療法につきいささかの所見を得たので,ここに報告する。
The authors found the cause of the black hairy tongue was due to infection by bacillus subtilis, a gram-positive rod-shaped bacilli, and another bacteria filamentous in character.
This type of infection occurring consequently to antibiotic administration may differ in intensity and depth of the growth of the black hairy tongue in accordancc to the circumstances to which the invading organism may be composed of the gram-positive bacilli alone or that it may be combined with that pappiliform filamentous bacilli.
For treatment of the black hairy tongue these two forms of infection should be differentiated. Other cases reported in the literature are discussed.
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