胎芽症と考えられるPierre-Robin症候群の1例ならびに実験的小顎症の発生

PIERRE-ROBIN SYNDROME CAUSING CONGENITAL ANOMALY

　I．はじめに

　最近急性感染症，栄養不良などによる乳児の死亡は減少したが，先天異常による死亡は減少せず，発生率そのものも増加の傾向にある。さらに先天性といわれたものも遺伝子性，性細胞性，胚子性，胚芽性，胎芽性，胎児性など細かい分類がされるようになつて来た。

　小顎症，舌下垂，チアノーゼ，喘鳴などを有するピエルロバン（Pierre-Robin）症候群は重症な場合には気道の狭窄により死亡することもあり，気管切開，舌固定などがもつとも有効な手段となることが少なくないわけで，分娩後間もなく耳鼻科医が関係せねばならない先天異常である。私たちは胎芽症と考えられる本症の1例を観察，剖検する機会を得，また動物実験で小顎症の発生をいささか試みたので報告し，本症の原因について私見を述べたいと思う。

　An observation made on post-mortem examination of a 5 month old child that died of Pierre-Robin sydrome is reported. The child was found to be affected with mandibular malformation, cleftpalate, defective ventricular septum, aural fistula and defective finger-joints. Experimantally in mice, authors produced offsprings with mandibular malformation by means of feeding excessive vitamin A and endoxan to pregnant animals.