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副鼻腔気管支炎(慢性副鼻腔炎と慢性気管支炎または気管支拡張症との合併)とその保存的療法
粟田口 省吾
1
1弘前大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.945-953
発行日 1965年10月20日
Published Date 1965/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203497
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Ⅰ.まえがき
最近,いろいろな検査法の進歩,抗生物質や化学療法剤の発達により,気道の急性炎症性疾患は,早期に確実に診断され,適正な治療が行なわれるため,多くの例では痕跡なきまでに治癒するが,一度,慢性化したものでは簡単に根治し得ないのみならず,外科療法によつて病巣部を限局的に摘出することが幸いに出来ても完全に治癒し難いことがしばしばある。慢性副鼻腔炎や気管支拡張症は,その代表的なものであり,ことに以下述べようと思う副鼻腔気管支炎(Sinobronchitis or Sinobronchial Syndrome)1)と云はれる慢性副鼻腔炎と慢性気管支炎ないしは気管支拡張症が合併し,かつ気道隣接リンパ節の腫脹を伴つた徴候群では,その全体の根治は甚だ困難である。なお,現在では,慢性副鼻腔炎は専ら耳鼻咽喉科医によつて治療され,慢性気管支炎や気管支拡張症は内科医,呼吸器科医,あるいは小児科医などにより診療され,両疾患の合併は一応予想されても,その具体的な診断や治療は行なわれず,耳鼻咽喉科医はしばしば下気道の慢性炎症を無視して上気道疾患のみ治療し,内科医,呼吸器科医,小児科医は,慢性副鼻腔炎や鼻茸のあるのを知らずに,喀疾や咳漱や呼吸困難は,単に気管支肺疾患に由来するものとのみ考えて,その根本的治療法や予後判断を誤ることが尠なくない。
そこで,今回は,まず,慢性副鼻腔炎と慢性気管支炎ないしは気管支拡張症との合併について,従来の諸家の報告を参照し,私見の大略を述べるとともに,その治療法,とくに保存的療法について記してみたい。
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