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Ⅰ.緒言
或る耳鼻科医が精薄施設より送られて来た1人の智能障害児の聴力検査を行つたところ,平均40dbの聴力損夫を示した。その耳鼻科医は,被験者が智能障害児であるところから,その検査結果を信頼していいかどうか迷つたと云う。彼の質問は,智能障害児に純音聴力検査を行う場合,1体Mental Age(以下M. Aと略す)なりIntelligence Quotient(以下I. Qと略す)なりがどれ程あれば検査結果を信じてよいかというにある。設備のととのつたhearing clinicであれば言語聴力検査,Play audiometryその他他覚的検査等を全て行つて信頼すべき検査結果をうる事ができるが,private officeで気導,骨導の検査しかできない場合,彼の持つ疑問は当然である。I. Q 40の子供が30dbの聴力閾値を示したとしても,果して30dbの聴力損夫があるのか,或はI. Q 40の子供に0dbの音に対して反応する事を求めるのが無理なのかは確に問題である。
智能障害児の聴力に関する文献は余り多くをみないが,その殆んどが智能障害児には高率に難聴の認められる事を報じている。Kodman1)2)は,検査可能であつた189人の中,21%に難聴を認め9%が純音聴力検査不能のため結果不明で,後者の平均のM. Aは2.4歳,平均のI. Qは25.5と報じている。Birch及びMatthews3)はChronological Age(以下C. Aと略す)が10〜19歳でM. Aが約5歳或はそれ以上の智能障害児247名の聴力を検査し,その55%に聴力障害を認めている。彼は,M. Aが4〜5歳のグループでは3名の中2名の比率で,5〜6歳のグループでは4名中3名,6〜7歳のグループでは8名中7名の比率で信頼できる聴力検査が可能であつたと述べている。Foale及びPaterson4)は,100名の智能障害者(年齢10〜19歳,平均I. Q 66)の中13%に難聴を認めている。Schlanger及びGottsleben5)は,498名の中非常に軽度のものを含めて48.8%に難聴を認め,16.5%が検査不能であつたという。どの文献も不成功例の比率を述べてはいるが,検査可能だつた者のAudiogramの信頼性については多くを語つていない。この点については花岡6)7)は,3〜6歳迄の聴力正常と思われるグループ418名(智能は平均より優れたものも劣つたものもまじつている)にpeep show testで聴力検査を施行した結果,その平均値に於ては3歳児でも成人との差は10db以内に止つたという。
To what extent the threshold hearing test made among the mentally defectives may be dependable is studied. Hearing tests were first conducted among 31 individuals of this nature whose hearing acuity was considered as normal. From this study it has been revealed that the subjective puretone hearing test made among mentally defective individuals whose intelligence quotient is over 30 or the mental age above the age 3 or 4 is considerably dependable.
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