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I.はしがき
今日の大勢としては,聴神経腫瘍は内耳孔附近の内耳神経の前庭神経から発生すると考えられている(Lundborg1)Graf2))。臨床的にはCushing,Dandy3)4),Henschen5),Horrax6)7),Nylén8)9),Lundborg1),Olivecrona10),Graf2),中田13),森本14,15)等の綜合的な研究を始めとして,すぐれた研究報告が非常に多い。聴神経腫瘍は1側性感音系難聴,温度性眼振の低下,欠如,自発眼振,顔面神経麻痺,三叉神経症状,内耳道,孔の拡大等の典型的症状を出現するに至れば診断は容易になるが,早期診断は非常にむずかしい。Henschen&Lundborg5),Lundborg1)等は典型的症状を示さないものが12.7%あつたと述べBucy&Ismat12)は早期には進行性難聴のみが症状であるとし,森本14)15)も早期確定診断の容易でない事を述べている。斯様に異型の症状をとるものがある事と早期には内耳神経症状位しか示さない事のため,診断確定に時日を要する場合が多いと思われる。最近の脳外科学の進歩により,聴神経腫瘍は全剔出による永久治癒可能となつた手術価値の大きい頭蓋内腫瘍である。手術効果を上げるにはCushingの第1期,第2期迄に本腫瘍の局在部位を診断する必要があるといわれている。
最近,我々はCushing第2期,母指頭大の聴神経腫瘍(組織像Neurinoma)症例につき比較的詳細に耳鼻科学的検索を行う機会を得たので,いささかの考察を加え報告する。
Yoshie reports a case of left-sided 8th nerve neurinoma, in a patient a man, aged 35, that was treated with subtotal removal. The patient recovered to carry on his normal routine.
The diagnosis of the tumor was based on findings of second stage Cushing symptoms, positional nystagmus, cervical rigidity, a complete left-sided deafness, paralysis of left semicircular canals and disturbances in the 5th and 7th nerves. Microscopically the tumor was a typical neurinoma.
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