特集 出血と止血
Ⅱ.各論
1.部位別の出血及び止血
b.鼻
高橋 良
1
1慈恵医大
pp.300-306
発行日 1961年4月20日
Published Date 1961/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202649
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.序言
鼻出血は耳鼻科臨床の中でも最も重要な症候の一つであろう。そして其の出血は他部の出血と比べ色々の特徴を持つている。即ち実際臨床に於て相当頻度の多いものである上に出血の原因が,不明の自発性のものにせよ原因の明らかなものにせよ,出血部位の確認の困難な事が少くなく,その止血処置も適確を欠く事が多い。其の部位は腔内の事であり粘膜下層が骨質であるため鉗了や結紮が効かず,不本意ながらタンポンと云う様な間接的圧迫処置で我慢しなければならない事が多い。而も鼻腔粘膜は血管に富み吻合が著明で上皮内小血管Glomus-Anastomoseと云つた特殊な毛細血管構造をも有する(白岩)上に,出血し易い而も外界に近いLittle's area(Locus Kiesselbachii)等を有し,複雑な鼻腔構造からの出血故一般の外科知識のみでは制禦し得ず,相当の専門知識を必要とする。そして小量の出血でも精神的影響が大きいばかりでなく,それが重大な意義を示している事が少くないので当面の止血のみならず,出血の本態への指針にとつても重要なものである。
Copyright © 1961, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.