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口腔底皮様嚢腫の1例並びにその文献的考察
平野 一弥
1
,
深町 正雄
1
,
渋谷 幸一
1
,
小林 定碔
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.151-158
発行日 1961年2月20日
Published Date 1961/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202621
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I.緒言
元来口腔底に発生する腫瘍様形成物は稀有なるものとされて居るが,然し,蝦蟇腫は比較的屡々経験される。此の蝦蟇腫に類似して居るが,Krabber氏に依り"Eine tiefe Atherom cyste amHalse mit Ranula"と言われた口腔底皮様嚢腫を発見診療すると言う事は稀な事である。亦本嚢腫は所謂異所性新生物として胎生期に於ける皮膚胚芽迷入に其の発生基礎を有するものと考えられ,斯る発生基礎の存在に対して,何等かの内因或は外因が加わると,統計的に見て,多くは所謂思春期に於て発現増大するものとされ,最も古い文献は1862年Hulkeが右側舌下部に発生した23歳の女子の口腔底皮様嚢腫を報じて居る。次いで1870年にFerguson(40歳及び20歳♀),Krabber 1879年(24♀),本邦では1921年(大正11年)小山氏が舌下中央部に発生を見た26歳の女子,次いで1932年(大正13年)衛藤氏(12歳♀,22歳31歳の♂),遠藤氏(25歳♂)が此れに続き,爾来比較的多数の報告者が輩出するに至ったが尚稀有なる疾患として,或いは臨床上意味あるものとして記載されて居る。
吾々は当大藤クリニックを訪れた本症の1例を経験したので,此処に文献的考察を併せ報告する次第である。
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