廻盲部より転移せる口蓋扁桃肉腫の1例

　I．まえがき

　口蓋扁桃の悪性腫瘍は屡々認められるが，報告例の多くは原発性のもので，口蓋扁桃と他臓器との悪性腫瘍重複例の報告は比較的稀であり，僅かにMenzel，Willis，粟田口の報告があるのみである。われわれは最近臨床上，廻盲部と左口蓋扁桃の悪性腫瘍重複を想わせる症例を経験し，死亡するに至るまでの経過を観察すると共に死後剖検を行い，興味ある知見を得たのでその大要を報告する。

　A case of sarcoma of the tonsil that metastasized from the original malignant growthof the intestines is reported. The tonsillarmalignancy was successfully removed butthe patient died of the original affection.