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I.緒言
Para-phenylendiaminは1888年Eldman(独)がこれを毛織物の染色に使用することを提唱して以来,最初はこの用途にのみ使用されていた。この色素はその色彩が日本人の頭髮の色に類似しているため,後年本邦において白髮染として使用することに着目され,現在なおその主成分としてひろく使用されている。
Para-phenylendjamin(以下P. P. D. A.と略称する)は劇毒物で,したがつてその取扱には注意を要する道理であるが,内服によらねば毒性を発揮することは少なく,この中毒例はきわめて稀であるが皆無とはいわれない。殊に服用した毒物が何であるかを知る手懸りがえられない場合には,治療に立会つた医師を困惑させることが多い。私たちは最近この症例に遭遇し,その経過をつぶさに観察し,治療を行う機会をえたので,ここに報告することにした。
It is found that toxicosis with hairdyes, the black dyes for gray hairs, when taken internally causes a peculiar reaction involving the soft tissues of the infra-lingual region to board-like hardness, resembling Ludwig's angina. For this reason, without the aid of tracheotomy the patient is likely to die from dyspnea by pressure suffocation. The authors report 2 cases of such a toxicosis.
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