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食道癌或は縦隔洞腫瘍に依る食道の通過障碍の際は,胃瘻造設に依り一時的に生命を長びかせる事は可能である。然し気管が腫瘍に依り侵され,呼吸困難を来せる場合は,かかる姑息的な治療も不可能なものとされていた。原病が悪性腫瘍たる癌腫の場合は,特に現在の医学を以てしては死の宣告を受けたにも等しいものである。かかる死という本態的には動かし難い現実に対し,幾分でも死えの時間的延長を望むのも亦人間として当然と考えられる。又縦隔洞腫瘍,同帰神経麻痺に依る呼吸困難に対して気管切開をした所が気管も侵されていて気管切開のみでは呼吸は不可能であつた場合に,手術台上で患者を窒息死させる事は医師の意地としても許されぬ事である。私は食道より原発せる縦隔洞癌腫に気管も侵され,更に両側回帰神経麻痺を起し呼吸困難を来せる患者に対し,種々の工夫を試み,予想以上に成功を收めたと考える症例に就いて報告し,諸賢の御批判を仰ぐ次第である。
IWATAKE reports a case mediastinal cancer that caused pressure occlusion of the major portion of trachea to the bifurcation and in-volvement of the recurrent laryngeal nerve. Because of marked dyspnea tracheotomy was performed but, without relief; insertion of bronchoscope was only means by which the patient was kept alive. By using brass and rubber tubes to uphold tracheal contour the patient was, further, kept alive for 3 months thereafter.
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