特集 扁桃摘出の病理と手術
私はこう考える
大野 喜伊次
1
1大野醫院
pp.803-805
発行日 1953年11月30日
Published Date 1953/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201028
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私は震災と戰禍で診療録も失い且無學で81歳の頽齡だから,學術的の記事は到底出來得べきでないが,本邦での扁摘開始からの實状を見聞して來た生き殘りの一人として,不文も省ず命に從い敢で筆を執つた。
約半世期以前で扁桃腺の認識極めて幼稚な時代の明治41, 2年に,私は博覧強記と稱せられた恩師故小此木信六郞先生から多數の外誌を示された上,この通り歐米では扁桃腺に關する新研究が續々澤山發表され,智能の發達に影響すること,ロイマチス腎炎などを誘起すること,そして全摘で治癒すること及び其方法まで詳細に報告されて居る。だから吾々も大いに注意し全摘も試むるようにせよ,と熱心に教えられたのであつた。先生の懇篤な指導を受けても扁摘器もなく私は手の下しようもなかつた。
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