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鼻閉塞に關する臨床的研究
白岩 俊雄
1
,
渡部 三郞
1
1東京醫大
pp.592-597
発行日 1953年10月20日
Published Date 1953/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200977
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鼻閉に就て 歐米の成書を見ても同樣であるが,我々が日常取扱う鼻疾患者の最も多くの者が訴えるのは鼻閉である。此鼻閉の結果として見られる最も重要な症状は呼吸の障碍である。鼻閉に伴う口呼吸の害は屡々論議されるが,より本質的な鼻閉の呼吸機能に及ぼす影響に關しては,未だ適當に認識されていない樣である。我々が最近2年餘り,臨床的に鼻閉に關する研究を始めたのも此爲である。臨床經驗の一部は「鼻閉に伴う症状と其療法」として,雑誌「治療」第34巻,第10號に記述してあるから參照していただきたい。
人間の最も自然な,而も本能的な呼吸道は鼻である。試みに乳幼兒の鼻を閉じて見れば,彼等は代償的に口呼吸を行う事を知らず,專心鼻呼吸の爲に努力,苦悶した後呼吸を停止する。斯くの如く鼻閉が幼小兒に起れば其影響は著明に現れ,從來所謂アデノイド症状として知られている。幾つかの本來の鼻閉症状を顯現する。併し補助呼吸法としての口呼吸を行う事を知得して了つた成人に成長後鼻閉が起つても,幼小兒の樣な著明な症状は發現しない。故に成人には鼻閉に因る呼吸障碍が無いと云うのではない。而も鼻閉に因る呼吸障碍に随伴する各種の症状は決して機械的乃至器質的の鼻閉塞にのみ因る結果とは云えない。色々な機能的要約も加わつて,複雑な症状が發現して來るのである。我々は是等症状の一部を專ら臨床的に鼻閉患者に就て追求して見たのである。
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