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赤い鼻
pp.525
発行日 1952年11月20日
Published Date 1952/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200787
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「あなかたはとみゆるものは御はななり,けりさきのかたみしたりて色づきたる(末摘花の本文……」これは,爾岐美波奈,皶鼻(戯鼻)酒皶鼻,鼻上皰,柘榴鼻,酒皶,皶赤皰,鼻皶,紅糟鼻,酒査鼻,銅色鼻,玫瑰刺瘍,酒皶風などの異名を持つ赤鼻のことを云つたものである。この赤鼻le nexrougeに酒の字を冠するのは,酒客に多いと信じられていたからであろう。フランスでもAcne roseceaのことをla couperose alcooliqueとわざわざ酒の形容詞を付して呼んでいるから面白い。
諺に「赤い鼻を見れば酒のみと思え」など,穿つたのがある。フランスの俗語Couperoseはラテン語のCuperosa,独乙語のVitriol,英語のCapperas,伊太利語のCopparosa,スペイン語のCaparrosaに相当し,本来の意味は,硫酸塩,礬のことで,硫酸銅-胆礬硫酸銭-緑礬,硫酸亞鉛-皓礬等の例からでも判るように,赤鼻と一見無関係な意義を持つていた。ヴイラン,ベターマンは赤鼻なる呼称を与えた訳である。
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