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ヘノポヂー油に依る難聽の1例
臼井 誠一
1
1昭和醫科大學耳鼻咽喉科教室
pp.69-71
発行日 1949年2月20日
Published Date 1949/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200134
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緒言
Chenopodium anthelminticumの種子は一種の揮發油を含み,米國にては古くより驅虫劑として用ひられてゐる.ヘノポヂー油は即ち此種子より得たる揮發油であつて,其有効主成分はアスカリドールでテルペンの過酸化物である.ヘノポヂー油は蛔虫・十二指腸虫に用ひて驅虫の効を奏する.これは本劑が大量に吸收せらると赤血球を破壞する爲に黄疸を起し,輕度なる時は頭痛,嘔吐,眩暈,耳鳴,及び高度な難聽等があり,重症の場合には發熱.不整脈,速脈,呼吸困難,痙攣.強直,嗜眠,意識溷濁,瞳孔反射消失,視線輻輳,機能麻痺及び昏睡等を來たし,呼吸中樞麻痺により死の轉歸を取るに至ると言はれる.次に其中毒に因る聽器の動物實驗によると,Jonkhoffは前庭機能中半規管反應を侵襲することなきも耳石反射は早期に障碍せらると言ふ.これに反して赤松・和田兩氏は中毒徴候は純内耳性にして最初蝸牛殼螺旋神經節細胞,次で蝸牛殻神經,コルチ器の順に侵され前庭神經及び其の未梢器管には著變がないと言つてゐる.
又.岡氏の實驗によつてもヘノポヂー油は主として蝸牛殼神經を浸し,前庭神經は稀に輕度の障害を受けるのである.
A review of literature on loss of hearing caused by use of oil of chenopodium is made by the author with addition of his own case to the list
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