論説
鼻咽腔癌の一症例
大西 統
1
1京都府立醫科大學耳鼻咽喉科教室
pp.23-25
発行日 1948年4月1日
Published Date 1948/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200045
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緒言
鼻咽腔に發生する癌腫に關する文獻は非常に少く,ラツク・ヘルツフェルドに依ると全癌患者2萬8千例中僅かに1例,フィンダーに依ると7萬例中5例,グルトは1萬例中18例と云ふ數字を擧げて居る。アメリカのメモリアル・ホスピタルに於ける統計に依ると全惡性腫瘍の2%有ると言はれて居る。然し乍ら之等の統計上現はれて居る數字が少いのは鼻咽腔に於ける腫瘍はその初期に於ける症状が比較的少い爲めに早期發見が困難であつて身體各所に轉移を起してから之を發見し,その原發部を見失ふ爲めではないかと考へられるのである。
鼻咽腔に於ける腫瘍の最も發生し易い部分は,この部の後壁,即ち咽頭扁桃腺の部であつて,次でこの部の側壁即ち歐氏管開口部,ローゼンミュラー氏窩の部分である。而して鼻咽腔の底部即ち軟口蓋の上面及び鼻中隔後縁に於ては發生する事は無いと言はれて居る。
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