Japanese
English
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急性腎不全に於ける血液電解質の変動と腹膜灌流法
TREATMENT OF ACUTE RENAL FAILURE : CHANGES OF SERUM ELECTROLYTES AND PERITONEAL DIALYSIS.
佐藤 昭太郎
1
Shotaro SATO
1
1新潟大学医学部泌尿器科教室
1Department of Urology, Niigata University School of Medicine
pp.181-187
発行日 1962年3月1日
Published Date 1962/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203232
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I.急性腎不全に於ける血液電解質の変動
近年の体液化学の急速な進歩によつて急性腎不全に於ける病態生理が漸次明らかになつてきた。急性腎不全に陥ると患者は体液化学的にも重大な事態に立到る。即ち,尿形成及び排出の停止によつてただ単に窒素性老廃物の蓄積を来すだけでなく,体液の構成並びに組成,水分及び電解質の分布及び濃度に大きな変動を生ずる。これに不適当な治療が加えられるとこの変動及び不平衡は益々顕著となり,危機に達するのである。血液化学的組成に関してこの状態を簡単に要約すると次の如くである(Merrill,1955及び高安,1959)。
窒素性老廃物,即ち残余窒素或いは尿素窒素が上昇するだけでなく,屡々水分過剰の傾向に陥り,又体内蛋白の崩壊や細胞内カリウムの細胞外への移動に伴つて高カリウム血症を来す。ナトリウム及びクロールは細胞外液量の増加及び細胞内へのこれらイオンの移動という機序から夫々低ナトリウム血症及び低クロール血症となる。血清カルシウム値の減少を見るのに対し,燐酸塩,硫酸塩及び有機酸が増加し,代謝性アシドシスを来す。この実状を我々の教室に於けるデーターから見ると第1図の如くである。これは昭和32年以降教室で取扱つた各種腎不全48例(急性腎不全35例及び慢性腎不全13例)の各症例の臨床的及び血液化学的に最悪の状態であつた日の測定値を書き入れたものである。血液各組成について上述の傾向が明白に示されている。
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