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故奧野勇喜先生を偲んで
安元 健児
1
1久留米大学医学部皮膚科教室
pp.1013-1014
発行日 1960年11月1日
Published Date 1960/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491202945
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- 文献概要
先生は昭和28年12月九大皮膚科教室より,久留米大学教授として赴任され皮膚科学を担当されました。昭和31年4月皮膚泌尿器科教室が,それぞれ2講座に分離した時に皮膚科教室主任教授となられ,新しい教室をつくるためにその整備に努力されて来ました。
先生の研究業績は既に学会,著書並びに雑誌に数多く発表されておりますが,最近では「掻痒の研究」に全力を尽されておりました。あの独創的な理論は内外の文献を多く渉読し,更に驚くべき努力と精力を費やして行われた実験の賜であります。この研究は生化学的,生理学的な基礎実験は勿論のこと,臨牀的な裏付をも多数試みておられました。この種の実験対象はまず当学の学生諸君に協力を求められておりましたが,度び重なる実験に学生諸君は音を上げて,終りには皮膚科教室に捕まつては大変と,教室の前は遠廻りして通り抜けていた現状で,一方学生間に「皮膚科御殿で掻痒が招く」と語られる程でありました。学生以外にも多くの人に協力をお願いされて,幸い協力をしていただける集団があれば,県内は云うに及ばず熊本,佐賀県までもその遠近を問わず,教室員を引連れて自から実験を重ね検討されておりました。
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