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角質軟化剤に依る爪白癬の治験
佐藤 允康
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1東京大学医学部附属病院小石川分院皮膚科
pp.271-273
発行日 1956年5月1日
Published Date 1956/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201671
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爪白癬はその治療に吾々の甚だ困難する疾患の1つであつて,従来も2,3の方法ありとは云え,その成績は決して吾々を満足さすものでなかつた。撚るに最近に至りMünchen,Marchionini教室のGötzは角質軟化剤を応用,甚だ見るべき治療成績を挙げ,これを報ずるところあり,但しGötzが初め,チオグリコール酸カリウムを使用した成績は必ずしも優れたものとは云えず,Götzはその理由をチオグリコール酸カリウムの角質膨化作用はpH11〜12で発揮されるが,このpH値では之に有効な抗糸状菌剤を混合し得ない事実に帰した。偶々Alexanderは臭化リチウムが50%以上の濃度で糸状菌に感染した羊毛の角質を軟化せしめると報告し,Rothman,Taschdjianは同じく臭化リチウムが糸状菌感染を有する毛髮の角質透過性を亢進させ,且糸状菌発育を阻止することを確あ,ただ爪の角質に就いてはその作用を明らかにしなかつた。茲に於てGötzは死爪を用い,臭化リチウム,沃化リチウムの両者を種々比較実験した結果,アルカリ性に保つた80%沃化リチウムが角質軟化作用最も強く,且,又8%以上の濃度ではその糸状菌発育阻止作用をも有することを知るに至つた。
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