特集 皮膚泌尿器科診療の進歩〔2〕
上部尿路疝痛
辻 一郞
1
,
斯波 光生
1
1北海道大学(医学部泌尿器科教室)
pp.1228-1234
発行日 1955年12月25日
Published Date 1955/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201584
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緒言
上部尿路の各種疾患(通過障碍,炎症,腫瘍,血流障碍等)により色々な部位に色々な性質・強度の疼痛が起るが,疼痛の本態・発生及び伝達機構等の問題は極めて複雑で,今後の解明に俟つ所が多い。上部尿路の神経支配は概ね次の様に説明されている。即ち腎神経は胸髄下部及び腰髄上部の交感神経節から大・小内臓神経,大陽神経節,大動脈神経叢をへて腎莖血管周囲に腎神経叢を形成し,更に腎内に血管分枝に沿つて進入し,腎実質,血管壁,腎盂壁,腎被膜等に分布している。尿管は上部では腎神経叢及び大動脈神経叢から,下部では下腹神経叢及び骨盤神経叢からの神経分布を受けている。其他迷走神経から大陽神経叢・大動脈神経叢・腎神経叢を経て,又骨盤神経から骨盤神経叢を経て,腎及び尿管下部に,副交感神経も分布しているという説もある。腎尿管の神経叢は睾丸或は卵巣に至る神経叢とも連絡している。上部尿路の知覚線維は上記の交感神経経路を求心性に走つているのであるが,腎実質には知覚神経終末はなく,一般に腎尿管よりの疼痛は腎盂尿管壁(殊に平滑筋)或は腎・尿管の血管壁に源を発するものと考えられている。腎被膜にも知覚神経終末があるという説には尚議論がある。一方上部尿路病変が隣接腹膜を刺戟して腹膜よりの疼痛が起る事も忘れてはならない。
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