泌尿器科図譜・44
多発性単純性腎嚢胞
山藤 政夫
1
,
荒井 秀雄
1
1慶大皮泌科
pp.629-630
発行日 1954年11月1日
Published Date 1954/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201293
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患者,37歳既婚女子。家族歴に同様腎疾患を有するものなく,既往歴に特記するものはない。20歳頃より,右側腹部に時折鈍痛を有したが本年7月より同部に腫瘤を触れる様になり来院した。一般状態は良好で左腎は触れず右腎下極は臍下一横指にふれ成人手拳大,表面平滑堅く,呼吸性移動著明である。膀胱尿は比重1020で量正常その他に著変をみず,両側腎分離尿も異常をみない。腎機能は正常である。経静脈性腎盂像,逆行性腎盂像は図に示す如くである。右腎腫瘍の診断のもとに8月30日腎摘出術施行。摘出腎所見は重量192gr6.7×10.1×3.5cm表面には凹凸不平に全体に鶏卵大より小豆大迄の波動性嚢腫が存在す。その内容液中に尿素を証明し得ない。割面を加えると個々の嚢腫と腎盂との交通は全くなく腎盂には著明な拡張をみた。術後の経過は良好で術後膀胱尿は清澄であり,此重1020〜1025で量も又1000〜1500ccを認めている。
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