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皮膚真菌症に対するトリコマイシン軟膏の治療成績
小森谷 正義
1
,
渡辺 昌平
1
1京都大学医学部皮膚科教室
pp.601-604
発行日 1954年10月1日
Published Date 1954/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201288
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1.緒言
最近の医学の発達に依り相踵いで発見された新しい抗生物質の一群は治療医学に偉大な貢献をもたらし一時代を劃した。併し,尚最も抵抗の強いカビ類に効奏する抗生物質の出現が期待されていたが,1952年細谷教授等に依り発見されたトリコマイシンは此の目的に沿うものであり,同教授等の研究に依ればTrichomonas,Trichophyton,Candida,Sacharomyces等の発育を試験管内で強く抑制し,Treponema pallidum(梅毒兎睾丸の生理食塩水懸濁液)の運動を完全に停止せしめると云う。トリコマイシンは1951年細谷及びその協同研究者が八丈島の宇喜多秀家の墓所の土から分離した1新放線状菌Streptomyces Hachijoensisをオーレオマイシン生産用培養液で培養し,之を遠心して上清と沈澱に分けた後者の方に命名された抗生物質である。小堀等は各種濃度のトリコマイシン軟膏を臨床的に皮膚白癬症に用い,100,000TE/g以上の濃度のものでは極めて優れた効果を示したと報告している。同時にトリコマイシンを加える基剤に就いては力価の低下を防ぐ意味で実験的に親水ワセリンが最も適したものであるとしている。伊藤等はトリコマイシン・ワゼリン150,000TE/gを使用し,頑癬,小水疱性斑状白癬等に効果を認め,10%ウンデシレン酸軟膏に依る治療成績と比較して治療日数が多少短かく,副作用が少いとしている。
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