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毛髪の研究(第1報)—スンプ法に依る毛髪像に就いて
大矢 正己
1,2
1慶応大学医学部皮膚科泌尿器科教室
2国立大蔵病院皮膚泌尿器科
pp.411-416
発行日 1954年7月1日
Published Date 1954/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201235
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緒言
スンプ法とは鈴木氏万能顕微印画法(特許第38353号昭和5年9月16日)の英訳名のSuzuki'sUniversal Micro-Printingの頭文字を綴つた略称で,原理はセルロイドの薄板に溶剤を塗布して軟化させ,其の上に被検物を置いて自然乾固後被検物を取り除き,出来た印型を顕微鏡で観察する方法である。本法は各方面に応用されて居るが医学上にも用いられ1)−4),主として毛髪特に毛小皮像に就いて諸家の報告がある1)5)−10)。外国でも毛小皮像の観察に類似の方法が考えられて居る。即ちSaxinger11)はセルロイド溶液を用いる印画法を考案し,次でLodeman12)はゲラチン液を用い,更にSchröder13)及びLochte14)は露光しない写真のフイルムのゲラチン面に印画する事を考え,現在此の方法が用いられて居る15)16)。然しスンプ法に比較すれば繁雑で或程度の熟練を要し,且つ生体にそのまま応用し難い等の欠点がある。之に対してスンプ法は極めて簡便で応用範囲も広く,生体にそのまま応用出来る等はるかに優秀な方法である。而して之等諸家の報告を見ると或は人毛と獣毛の鑑別に就いて,或は人毛の性別,年令別色別の差異等に就いて毛小皮像の重要性を強調しながらも其の記載は漠然として居り,個々の例を単に列記し,或は図示して居るに過ぎないものが多い。之は毛小皮像が一見極めて複雑で,一定の型に分類する事が困難な為である。
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