--------------------
毛髪の研究(第2報)毛根固着力に就いて
大矢 正己
1,2
1慶応大学医学部皮膚科泌尿器科教室
2国立大蔵病院皮膚泌尿器科
pp.463-467
発行日 1954年8月1日
Published Date 1954/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201249
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
緒言
毛根固着力に就いては初めBasler1)2)が報告し,本邦では李3),大森4)の報告があり,部位別,性別,色別の強さ及び毛髪の太さとの関係等に就いて述べて居る。而して毛根固着力とは毛の毛嚢内に固着せる毛根を抜き去る時に抵抗する力であると定義し,解剖的要約に依る皮膚の栄養状態の如何に依つて左右されると結論して居る。然し乍ら之は漠然とした結論であつて,吾人を十分納得させる事は出来ない。私は毛根固着力に就いてスンプ法を応用して更に具体的な検討を試みた。衆知の如く毛髪を急激に引き抜く時は毛根に白い附着物を認めるが,之は毛嚢の一部,内外毛根鞘である事が其の組織標本で明瞭である(第1図)。ところが毛根固着力検査器で徐々に引き抜く時は此の白い附着物を認める事もあるが,多くは之を認めない。之をスンプして見ると毛根の毛小皮は剥離して居り,毛嚢と密着して居た事が明かである(第2図)。毛根固着力は毛髪の太さに関係するであろう事は推察に難くないが,更に以上の点より毛嚢との密着部の長さ即ちスンプ像での毛小皮剥離部の長さが関係するであろう事も容易に推察される。そこで私は毛根固着力測定に際し同時に其の毛髪の太さと毛嚢密着部の長さを測定した。又交代期の毛髪は検査から除外しなければならないが,李,大森等の如く単に弱い力で抜けるものとか,或は一定の力以下で抜けるものを交代期の毛髪とする事は適当ではない。
Copyright © 1954, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.