今月の主題 微量金属
技術解説
毛髪と水銀
住野 公昭
1
1神戸大学・公衆衛生
pp.767-773
発行日 1980年7月15日
Published Date 1980/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915511
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環境汚染はより広義の環境破壊に比して,その対象は化学物質に限られている.国内各分野の努力により環境汚染の勃発時からこの10年,よほどその状況は改善されたと言ってよい.したがってこの時期に環境汚染による健康障害の検診・診断の機会が増加してきているとは言い難い.また局所的な暴露が最も懸念される化学物質取り扱い職場においても,金属中毒の発生要因の増大は認められない.一部中小零細企業従業員の検診などの問題は残っているが,それでも水銀に限ればその管理はより良い方向に向かっている.その意味では,より微量のより長期の金属暴露の影響が検討されている段階である.
したがってこの稿の意義は微量水銀中毒への啓蒙と,その指標としての毛髪分析を水銀専門家に依頼することなく自施設で行える教育を行うことにあるであろう.なお水銀の分析法はこの10年飛躍的に進歩したと言えないので,実技面の記載は旧稿に若干の加筆にとどめたことを諒とされたい.
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