皮膚科圖譜・23・24
特發性蟹足腫/ペラグラ
久木田 淳
1
1東大皮膚科
発行日 1953年1月1日
Published Date 1953/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200880
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患者は28歳の未婚婦人。家族歴に特記すべきことなし。3歳の頃何等原因なく右肩胛部に拇指頭大,淡褐色,彈性硬,扁平に僅かに隆起した結節を生じた。5歳の頃その切除を受けたところ手術創の瘢痕が隆起するとゝもに,その頃から殆んど全身の健康皮膚に同様の結節が散在性に生じ,次第に増大して小豆大から鷄卵大位迄の結節となつた。18歳頃からは特に急激に増大し,20歳の頃には躯幹のものは互に融合,前胸部から背部,右腋窩部,右上腕にかけてを廣く板状に覆い,爲に右上肢の運動は障碍されるに至つた。その後も現在迄徐々に新生,進行,擴大している。時に掻痒あり,又時に潰瘍の凸みが化膿し,腫脹して疼痛を覺えることがある。現在圖のように褐色,不平,光澤ある硬い蟹足腫が,例えば何か人工的に粘土の塊を皮膚上に貼りつけたように擴がつている。上背左右のものが正中線で融合,その健常皮膚との境界線がV字を倒かにした形の切れ込みを見せ,又陰阜のものが三角巾をあてがつた形をなす等甚だ奇異である。新らしいものは淡紅色の,太い隆起線状をなすのが右肩に見られる。右胸部から右上腕へかけて腫瘍の凹みに瘻孔が形成され,惡臭ある分泌がある。瘻孔切開,レントゲン照射,一部腫瘍組織内にナイトロミン注射を行つているが,效果は定かでない。
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