- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
第50回日本皮膚科學會見聞記
第50回日本皮膚科學會總會は第13回日本醫學會總會の第29分科會として昭和26年4月2,3日東京神田駿河臺日本醫師會館に於て開催,2日とも春雨烟る中にも500餘名の參會者があり,盛會裡に終始した。以下本會の印象の一端を綴つて見よう。
會頭,東大北村包彦教授の宿題報告「濕疹及び濕疹樣疾患の治療」は4月3日午前11時より1時間に亘つて行われ,聽者に多大の感銘を與えた。元來濕疹の問題は,同教授もその演説の冐頭に述べられた如く,舊くして又常に新しいテーマであり,既往の總會に於て既に8回も宿題乃至特別講演として取上げられている。今回は特に戰後現われた各種の嶄新な治療劑に就て從横の檢討を加え,今日の濕疹及び類似疾患の治療に一應の指針を與えんとされたのである。演説内容は3部に分れ,その1は東大及び同分院皮膚科の擔當でSH化合物(BAL, Sodium thioglycollate等),抗ヒスタミン劑,生物學的製劑(コンムニン,精製痘苗等),自律神經遮斷劑(テブロン),ペニシリン等の作用機序の解明とそれ等に依る治療成績,又從來用いられているホルモン,レ線照射,Bruck注射或はインシユリン療法等の再檢討に關するものであり,その2は都立駒込病院安田博士擔當で,ビタミン,特にビタミンB缺乏症の皮膚疾患に對する意義の檢討とビタミンB1或はB2による治療成績,その3は東京遞信病院皮膚科小堀博士等の擔當する新型式基礎膏に關するものであつた。尚本演説は從來慣用の掛圖表或はエピヂアスコープを全然使用せず,全てライカ・プロジエクターを利用して行われたが,影像の鮮明度並びに人手,時間の節約に見るべきものがあり,他の一般演説或は追加討論に於ても之を利用して效果をあげたものが多かつた。
一般演説は4月2日午前,午後及び同3目午前の1日半に亘つて行われ,申込演題192題の内,選ばれた65題が演説された。多數の追加討論が行われたにも不拘,略々豫定通りの數が演説されたのは,演説時間がよく守られた故で,各演者は短い時間にも委曲をつくし,この點逐年進歩め跡が窺われる。演説すべき演題を選ぶに當り,今回は各學校或は各病院單位に夫々1題宛割當の方式が探られたが,一方各地方會或は各ブロツクより演題若干を推薦せしめ,精選された演題に相當の時間を與える案も出されており,今後の問題となろう。一般演説中興味のあつたものを拾つて見る。
Copyright © 1951, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.