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マフアルゾール「第一」による大量強力療法
荒川 忠良
1
,
齋藤 利秋
1
1徳島醫科大學皮泌科教室
pp.17-22
発行日 1950年1月1日
Published Date 1950/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200295
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梅毒の治療が困難なことは今も昔も變りがない。患者の梅毒に對する認識は未だ淺く,自覺症がないので一般には健康者として家業に從事しており,それに經濟的事情が加はつて,我々が治癒の判定を下すまでの長期間の治療を完了するには餘程の忍耐を要する。不完全治療の有害性が強調されて既に久しいが中途で癈療する患者は益々多い。この事に關しては昔から多數の記載があり,又最近では伊藤,吉田兩氏の詳細な治療離脱の統計及び原田教授の5週内の治療癈絶50%といふ成績に見られる樣に日本の現状としてなるべく短期間に治療を完了することが望ましい。又治療離脱者が必ず相當數見られる事を覺悟するならば當初に於て出來るだけ大量の驅梅劑を用ひることが後發症状を防止するに有効と思はれる。
他方驅梅療法が化學療法の先驅として,EhrlichのいはゆるTherapia magna sterilisataを理想とする以上,出來るだけ早期に充分の治療を行うことはたとへPusay, Pickなどの反對があるとはいへ今日では萬人の認める所であろう。故太田教授は「過分の治療は過少のものよりも優ると云うことは斷定出來るだろうと思う。そしてその治療の開始が早ければ早い丈豫後が良いと云ふ事はもはや疑ふべからざる事實である」と記載され,故佐藤教授等も「早期に治療を受けた者は晩期に受けたものより其成績遙かに良好である」。
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