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頻死の出血を來せる先天性軸捻轉腎(所謂骨盤腎)の1例
田林 綱太
1
,
京塚 亘夫
1
1東京醫科大學泌尿器科
pp.194-198
発行日 1949年5月1日
Published Date 1949/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200185
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1.緒言
血尿は吾人日常の臨床で比較的多いものであるか,多くはその原因を想定し得られる.譬へば腎炎・結核・結石・腫瘍・腎下垂又膀胱前立腺の疾患その他で,容易に檢尿その他臨床上の簡單な檢査で大凡の方向は知り得られる.更に臨床上の症状と照し合せて膀胱鏡檢査及びピエログラヒーを行つて診斷を確定する筈であるが,時に大量の出血の爲めに診斷上の操作の暇ない場合がある.この際對症治療で止血し得るものであるか危險のまま手術を行う可きものであるかに至つては,原因不明なだけに誰しもが思ひ迷うものと老へる.余等は斯る例の數例を経驗したが,その2例は腎結核腔洞の橋状になつた血管の破綻であり,1例は所謂特發性の腎出血と何れも手術後に判明して確定診斷を記載した.
今度又長期に亘り,高度の血尿で患者は爲めに蝋様の貧血と無氣力になり,直ちに診斷上の操作を行う事の出來なかつた例に出逢つた.漸く止血し得たのでピエログラヒーを行つた所先天性の軸捻轉腎と知つた.その投影の状況から見て再發を考慮されたので腎摘を行い,比較的詳細に觀察する事が出來たので茲に報告してかかる大量出血の原因に就ての考察の一端とする.
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