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前立腺癌に於ける組織の酸Phosphataseの臨床的意義
岩下 健三
1
,
黑田 一秀
1
1北海道大學醫學部皮膚科泌尿器科教室
pp.157-164
発行日 1949年4月1日
Published Date 1949/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200175
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緒言
前立腺癌に於ける酸Phosphatase (以下酸Ph.と略記).の問題に就ては岩下がさきに「醫學」特輯號「惡性腫瘍の治療」(昭和23年4月)に,又最近には「治療」(第31卷,第3號)誌に詳しく論じておいた.從つて勿論茲々でそれを反復しようとは思はないが,前立腺癌に於ける酸Ph.と云へばアメリカに於ても骨轉移を併つた場合に於ける血清中のそれが専ら問題にされており,之に就ては最近實に活溌な業蹟が相次で公にされている.然し一方前立腺組織それ自身の酸Ph.が少くとも直接臨床的にどれ丈意義をもつているかに就てはまだ殆ど注目せられていない,(1)Dean-Woo-dard(1947)が直腸癌とも前立腺部に浸潤した膀胱癌とも診斷しかねた前立腺癌を.腫瘍組織片の酸Ph.量を測ることによつて確實に診斷し得てゐる事例が見られる位のものである.前立腺組織には凡そ他の如何なる組織とも比較にならない程大量の酸Ph.が含まれている事寳から導き出された方法であるが,一體前立腺癌の性ホルモン療法(岩下の前記論著に詳しい)が知られない以前ならいざ知らず,その奇蹟的効果が確認せられている今日では,日常遭遇することの少い事例ではあらうが斯樣な場合に少くともそれが前立腺に原發したものであるか否かを峻別することは實際上極めて大切な問題である.
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