特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第7集
血液生化学検査
酵素および関連物質
ACP(acid phosphatase)
久米 春喜
1
1東京大学大学院医学系研究科臓器病態外科学/泌尿器外科学
pp.214-217
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101780
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
酸ホスファターゼとは1)
酸ホスファターゼ(acid phosphatase:ACP)は,酸性pH下(pH4~6)で有機モノリン酸エステルを無機リン酸イオンとアルコールに加水分解する酵素である.ACPは,全身の組織に広く存在するが,特に前立腺(腺上皮)組織での発現が強く,他の組織に比べ200倍以上の酵素活性を有している.このほかに赤血球,血小板,hairy cell,肝,破骨細胞,脾,腎などでも比較的強い活性を認める.これらのACPはそれぞれ臓器ごとに特有の阻害物質を有していることでも知られている.例えば,前立腺由来のACP(prostatic acid phosphatase:PAP)活性はl-酒石酸に強く阻害されるが,これを利用して前立腺由来の酸ホスファターゼの酵素活性を測定することが可能である.一方,酒石酸によるこの阻害は骨(破骨細胞)やhairy cell由来のACPでは認められない(酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ,tartrate resistant ACP:TRACP).TRACPが破骨細胞に活性を有することから,破骨細胞の組織化学的な証明に用いられるだけでなく,最近では骨代謝マーカーとしても使用されている.このほか,赤血球由来のACP活性はホルムアルデヒドや銅イオンに強く阻害されることが知られている.
ヒトPAPは分子量約10万の糖蛋白質で前立腺特異抗原(prostate-specific antigen:PSA)と同様に前立腺上皮に特異的に発現していることが知られている.なお,PAPに関しては別項も参照されたい.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.