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梅毒大衆檢査に於ける井出反應の檢討
谷野 博
1
,
外塚 岩太郎
1
1北海道大學醫學部皮膚科泌尿器科教室
pp.230-233
発行日 1948年12月1日
Published Date 1948/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200129
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井出反應が創案せられた當初にはワ反應との一致率は90%以上と追試されたが,其の後の報告に依ると必ずしもそれ程の成績は得られて居らず,大體80%内外(84%—和田,74.2%一高岡)の一致率が妥當の樣に思はれる.蓋し此の事は被檢者全例からの數字であるが,一體井出反應を豫備試驗とした梅毒大衆檢査に於ては,一般に同反應陽性例のみを拾つて改めて更にワ反應を行ひ梅毒の有無を決定するのが慣はしとなつてゐる.從つて井出反應陰性の者は實際梅毒患者でありながら之から逸脱する事となり,勢ひ梅毒罹患率は實際よりも低く現はれる事が豫想され,又往々本反應に非特異反應の現はれる事實より,本反應は梅毒大衆反應懸不適當だと推論する者がある位である(中野・山岸・佐藤等).然し短時間内に多數の者を處理せんとする大衆檢査に於ては成るべく簡單にして低廉なる方法が望ましいが,ダール乾燥滴血反應の試藥が入手困難な今日,矢張り井出反應に依る外は無い.
そこで吾々は,曾て昭和19年札幌市民に行へる井出反應を豫備試驗とした梅毒大衆檢査に於ける経驗より本反感に現はるる非特異反應の原因を究明すると同時に,本反應陰性なりし爲にワ反應を行はざりし者の中に梅毒患者が幾何あるかを檢討して梅毒罹患率を補正し,可及的その誤差を僅少に止めて井出反應の應用價値の向上に資せんとする次第である.
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