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膠樣假性粟粒腫
戸澤 孝
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1大分縣立病院皮膚科泌尿器科
pp.116-117
発行日 1947年4月1日
Published Date 1947/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200028
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魚行商人たる57歳の男子。昭和17年5月初旬腸チブスを病んで大分縣立病院内科に入院中,偶然本症を發見されたものである。患者は過去20數年毎日の樣に魚を賣り歩き,外氣,外光に曝されて來た譯であるが,既に10数年前から左右顴骨部に帽針頭大,帯黄色の小結節の生ぜるに氣付いてゐた。そしてそれはその後何時とはなしに數を増し,その間又兩手背にも同様のものが生じたと云ふ。
現在日灼けの赤銅色をなし,皺多く,老人性萎縮の認められる顔面皮膚に左右顴骨部,鼻梁,口圍及び下口唇に限局して帽針頭乃至扁豆大,黄褐色,牛透明の小結節がビツシリと生じてゐるのは甚だ異様に見える。個々小結節は大體に於て獨立してゐるが,又2,3個の融合したものもある。皮膚面からは僅かに半球状に隆起じ,一見小水疱の觀があるが,水疱ではなく,充實性に弾力性軟に觸れ,これを強く摘むとその頂點で破裂して,内からゲラチン様,半凝固性の物質が壓出される,顔面と同様に日灼けし,且つ皮膚萎縮の認められる兩手背にも,同じ發疹が拇指,示指間の三角部に限局して生じてゐるが,此處では顔面程稠密はしてゐない。顔面のものも,この手背のものも自覺症状を缺如,それは既に述べたやうに長い間に徐々増生してきたものである。
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